Truth In Fantasy 1
 幻想世界の住人たち
 Gargoyle(ガーゴイル)

イラスト
 キリスト教の寺院を見ると、屋根の四隅に、醜い形をした怪物の像が備えつけられていることがあります。形状はさまざまですが、多くは人間と鳥を合成したような姿をしていて、尖ったくちばしと翼があります。この彫像こそが、ガーゴイルなのです。
 本来ガーゴイルは雨樋の出口に置かれたもので、雨水は雨樋を伝ってガーゴイルの「喉」に集まり、くちばしから出て地面に流れ落ちます。実際ガーゴイルという言葉自体、古フランス語の「gargoui11e―喉」という単語からきたものです。しかし後になると、この彫像は噴水の出口や建造物の控え壁などにも置かれるようになりました。

 ところで、この彫像たちにはモデルがあります。それは、キリスト教によってデーモンとか悪魔とかいう名でおとしめられた、異教の神々なのです(詳しくはデーモン&デヴィルの項参報)。
 また一説によれば、これは冥界に住む雨水を集める豊饒の怪物で、より高い位の霊に、護衛して仕えるのだともいいます。
 そんな悪魔たちが申聖な寺院の屋根に据えつけられたわけは、おおむね2つあります。1つは、寺院を訪れる人々に「信心しないと化け物にくわれるぞ」とおどすためで、もう1つはこのガーゴイルに悪霊を追い払う魔除けとしての役目を負わせるためです。したがって、その姿は恐ろしければ恐ろしいほど、ありがたがられました。
 こうした慣習は日本にもあります。仏教の四天王や仁王像に踏みつけられている天之邪鬼や、屋根のもっとも上におかれる鬼瓦などは、そのいい例です。

 この動くガーゴイルと似たものに「生ける彫像(living statue)」がありますが、こちらはたいてい、美しい人間の姿をしています。
 古来、人の姿をしたものには精霊がやどりやすいと考えられており、何かのきっかけや神々のきまぐれで動き出すことは、珍しくなっかたようです。そのもっとも有名な説話は、ギリシア・ローマ神話のピュグマリオン(Pygmalion)物語にあらわれています。
 キプロスの王ピュグマリオンは、象牙でつくった女の像に恋し、女神アプロディーテに祈ったところその像に生命(一説によれば女神自身)が宿って、妻にすることができました。

 「生ける彫像」は多くの文学作品にとりあげられていますが、ピュグマリオン同様、恋愛物語であることが多く、人を襲うことはあまりありません。ただし、プロスペル・メリメ作の『イ―ルのヴィーナス』では、花嫁に渡すはずの結婚指輪を青銅のヴィーナス像の指にしてしまったことから、新婚初夜の主人公は、花嫁ならぬ青銅の像に抱き締められて殺されてしまいます。
 像といえども、女心を傷つけられた女性は恐いようです。心当りのあるあなた、気をつけましょうね。

 実際のガーゴイルは動かない石像ですが、人間の想像力は、この石像に再び命を与えました。多くのRPGでは、ガ一ゴイルは自由に空を飛び、その鋭い爪や牙で冒険者に襲いかかってきます。もともと石でできているだけに、並みの剣では刃が立ちません。重量を利用して、人を押し潰そうとすることもあります。有効なのはハンマ―や槌矛(メイス)といった打ち壊し用の武器で、さもなければ魔法に頼るしかないでしょう。


Truth In Fantasy 1
幻想世界の住人たち
健部伸明と怪兵隊 著
本体1806円 A5判 296頁
ISBN4-915146-85-5 1988年10月08日

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